その反応は、間違っていなかった
- romoty

- 5月22日
- 読了時間: 2分
朝の静かな空気を切り裂くように、突然響いた家族の声。
「……ない!」
それは会社のIDパスだった。
出勤直前になって、いつも首から下げているはずのパスが消えていたのだ。
家の空気が一瞬で変わる。
昨日使っていた鞄をひっくり返し、洋服のポケットを探り、机の上や玄関まで確認する。しかし――どこにもない。
焦りだけが積み重なっていく。
時計を見るたびに、出発のタイムリミットが迫ってくる。
「このままじゃ間に合わない……」
そんな緊迫した空気の中、私はある方法を試すことにした。
――リーディング。
半信半疑ではあったけれど、今は少しの可能性にも賭けたかった。
家族が1階を探している間、私は2階へ向かった。
リーディングの問いに対して反応があった。
「前……次は右……いや、左?」
導かれるように進んでいく。まるで見えない何かが、「こっちだ」と囁いているようだった。
そして、ある地点でピタリと反応が止まった。
「ここだ……!」
胸が高鳴る。
しかし――そこには何もない。
床にも棚にも、IDパスらしきものは存在しなかった。ただの空間。静まり返った空気だけがそこにあった。
結局、どれだけ探しても見つからず、家族は少し遅れて出勤することになった。
私はずっと気になっていた。
「あの反応は何だったんだろう……?」
そしてその日の夜。
帰宅した家族から、ついに報告があった。
「見つかったよ!」
なんとIDパスは、鞄の“普段使わないポケット”に入っていたという。
思わず力が抜けた。見つかって本当に良かった。
……だが、その瞬間、私はあることに気づいてしまった。
リーディングの反応が消えた場所。
そこは、ちょうど真下――1階に、IDパスの入った鞄が置かれていた位置だったのだ。
私は2階ばかりに意識を向け、「下」を確認していなかった。思い込みで視野が狭くなっていたのである。
つまり――
リーディングは間違っていなかった。
私が、“正しく受け取れていなかった”だけだったのだ。

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